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借りるという選択肢がなかった人の話

コラムで、レンタル窯をおすすめしている私ですが、私自身はマイ窯を持っています。

わたしが大型の窯を購入したのは起業当時、「そもそも借りるという選択肢が選べなかったから買った」というのが理由です。

アトリエ、窯場など陶芸を本格的にするとなると仕事場の広さは制作効率に比例します。

移住前に首都圏に住んでいましたが、首都圏で理想の広さの物件がみつかっても予算が合いませんでした。

広くて安い賃料の空き家がないか全国都道府県すべてを調べました。

地価が低く地価下落推移も過去最悪を更新しつづけていた過疎地域の中から選りすぐりの過疎地を候補として選び、熊が頻繁にでるような山深い過疎地域に実際に移住前に下見に行ってみました。

実際に行ってみるとそこにいる人達の雰囲気や地域が自分の中でとても魅力的に感じたため、移住して起業に至りました。

ゆえに、徒歩圏内にアトリエもなく、もちろんレンタル窯もない。

まず第一に借りるという選択肢が選べないから買ったに他なりませんでした。

相棒を手に入れてよかったこと

あれから時は経ち、そこからまた引っ越して今となっては、鹿児島県に住んでいます。

ここも近所にレンタル窯がない環境なので、起業当時に購入した相棒の大型窯と共に仲良く暮らしています。

「引越しや電気代、設備投資費が高くて手がかかる相棒だな」と嫌に思うことも多いですが、私がこの大型窯を購入してよかったこともあります。

それは、リスキーな釉薬研究と自己中心的な釉薬実験がたくさんできたことです。

大量生産品は、常に合格ラインが出やすいように製造しないと失敗したときの損害をカバーできません。そのため、比較的コストを抑えられる原料を選定し、さらに安定した種類の釉薬で調合ポイントも無難なものしか製造しません。

少数生産の場合はコスト・時間・手間がかかるかわりに小ロットでも作ることができるので、ハイリスクな釉薬でも製品化実験に挑戦することが可能になります。

私は昔から美しくて珍しい器が好きでした。美しく珍しい釉薬は、大抵の場合ハイリスク・ハイコストです。そのため、大量生産品では製品化されていませんでした。

美しくて珍しい釉薬は大抵は高額な美術品でしか手に入れられません。

そんなん欲しくなるじゃないですか、窯、自分のあるんですからね、作りたくなるじゃないですか、美しくて珍しい釉薬の食器。自分の手で!!

そうして実験できる環境を手に入れられた私は、研究しなくちゃもったいない!の精神で、実現したい1色のために2000種類実験をすることもしばしば。

それくらい実験をしてもテストピースが1窯分全滅なこともよくありました。

爆発するかもしれない、釉垂れして棚板がダメになるかもしれない、窯が痛むかもしれない。

そんなハイリスクな実験は借り物の窯では到底できないのですからね。

2000色分の1、失敗した尸(しかばね)のテストピース中に1色でも理想に近い色が焼きあがっていた時は、最高に気分が上がってワクワクするのです。

その1/2000のワクワク色は、紗和製陶所の作品の釉薬としてすべて採用されています。

これまでの実験ではおそらく1〜2万色くらいテストしていますが、そのテストは自分で窯を買ったからこそ出会えたテストピースです。

そして、最高にワクワクさせてくれた奇跡のテストピースを使って、お客様にも同じようなワクワクが届けられたらと思い器を作っています。

この相棒を手に入れたから、私の最高のワクワクを届けることができているとするならば、それが一番窯を自分で買ってよかったと思う瞬間です。

最後に

この時代に窯を買った同士達よ、焼成費だけでなく窯のメンテナンス代もすごく上がっているということをお知らせしたいです。もしものために、窯の維持費積立をしましょう。

そして、窯を新しく買おうとしている方は1日でも早く買ってしまった方が良いと思います。日銀が利上げをした今、迷っている猶予はないです。できるなら一括キャッシュで。窯の運送費、設備工事費用もこの数年だけでも値上がりが激しいです。こちらも数百万ほど、一括キャッシュで投資ができるなら1日でも早くするのがおすすめです。

こうしていろいろとコストやワクワクを天秤にかけた上で、コロナショックや深刻なスタグフレーションの影響で国内の消費が冷え込みが加速している2024年の現在、私が窯を持っていなかったとしたら・・・もしかしたら窯は買わない選択をしていたかもしれませんね。

レンタルが長い目で見てお得だとおもうからです。

レンタル窯をしているところの徒歩圏内に引っ越したほうが結果的に割安になります。

不景気・物価高であれば、買うリスクが高すぎると考えたかもしれません。

さて、このタイミングでは銀行からお金借りたくないし、窯所有するデメリットが大きくてなんだかな・・・と迷っている方へ、さわ陶芸教室ではアーティストの方限定の短期月額利用プランがございます。